導入
言語聴覚士かめきちが、失語症のリハビリをおこなう上で大切にしていることについてお話していきます。
近年、失語症の本はさまざま出版されており、
自分が学生だった10数年前と比べるとさらにわかりやすい本が増えてきました。
しかし、今回の内容はそういった教科書にはあまり載っていないことをお話していきます。
座学では気づきにくい臨床ならではの視点でお話していきます。
・失語症臨床にあたる若手言語聴覚士
・中堅〜ベテランの言語聴覚士(若手言語聴覚士の指導)
・失語症の方と関わることがある看護師、理学療法士、作業療法士など
それではいきましょう!
① できた時にもフィードバックをする
自分が失語症患者さんだったと仮定して、リハビリを受けている時にこんなフィードバックばかりされたらどう思いますか?
「今のは違います。もっとこうしてください。」
まだ言い間違いがあります。
これでは言っている意味が伝わりません。
どうでしょうか?
- 「頑張ってるのにまだダメと言われる・・・」
- 「こんだけ頑張ってもダメならもうリハビリしてもよくならないんじゃないか・・・」
- 「もうあの亀の顔を見ただけでゾッとする・・・」
こんな気持ちになりませんでしたか?
これ当然の流れですよね。
できないことばかりフィードバックされると、
- 自信を喪失
- リハビリへのモチベーションが下がる
- セラピストと患者さんの信頼関係がうまく構築できなくなる
このようなことが起こる可能性があります。
これ、若手のセラピストさんほど見落としがちな視点だと思います。
かめきちも若手の頃は患者さんのことをよくしたい思いが先行しすぎて、
患者さんの気持ちを置き去りにしていたことがありました・・・
そうならないために重要なのが・・・
”できた時のフィードバックをする”ことです。
人間どうしても”できないこと”に目が向きがちですが、
セラピスト目線としては”できること”を見逃してはいけません。
そして見逃さないだけではありません。
- 何ができたのか?
- 何をしたことでどのようによかったのか?
を、瞬時に的確にフィードバックすることが重要です!
これとても重要な視点です!!!
”できたこと”のフィードバックができると、
患者さんは
- 「そうか!今のはよかったのか!」
- 「少しずつよくなってる!」
- 「できること、できないことが分かってきた!」
このように感じることができ、今後のリハビリが進みやすくなります。
できるセラピストはこのように、
患者さんの”できないこと”だけではなく”できること”にも注目しています!
自分の臨床を振り返ってみて足りていなかったと感じたら、
明日からの臨床に活かしてみてください。
② できる能力を活かす
1章での話と繋がる部分がありますが、これもとても大事な視点です。
リハビリでは”できないこと”を”できるようにする”という視点で関わりますが、
それが全てではありません。
1章でお話したことが身についていれば次は、
”できることをどのように活かしていくか”
これを考えていく必要があります。
患者さんのできる能力をどのように活かすかは、
セラピストの腕の見せどころです。
たとえばこんな患者さんがいたとします。
【ブローカ失語】
・非流暢な発話
・喚語困難
・錯語
「言いたいことがうまく伝わらない・・・」
【できること】
・なんとか単語レベルの書字は可能
・絵を描くのが得意
このような方の場合、
もちろん発話がうまくいくようにリハビリをしていきますが、
できないことばかり続けていると1章でお話した通りうまくいかない可能性があります。
そこで、思っていることを伝えたいという目的を達成するために、
発話に全て頼らずとも”できること”を活かしていけば、
思っていることを伝えられる可能性が上がりますよね。
このように患者さんの”できること”を活かしていけば、
患者さんの生活をよりよくしていくことができます。
③ 患者さんの身近な人(家族など)に失語症を知ってもらう
さいごは、患者さんが日常生活に戻ってからとても大事になるお話です。
失語症や高次脳機能障害は、
目には見えない障害
と表現されることがあります。
外見だけでは失語症や高次脳機能障害があることが理解されにくいので、
生活に戻ってもうまくいかない原因の一つになります。
入院中は、言語聴覚士など失語症を理解している人が多くいるので心配ありませんが、
退院後、日常生活に戻れば失語症を理解している人はほとんどいません。
そんな時に患者さんの支えになるのが、
一番身近にいる人(家族など)です。
ただ、先ほどもお話した通り失語症は目には見えにくに障害なので、
患者さんの一番の理解者であるご家族であっても、
コミュニケーションがうまくいかないことがあります。
- 「うちのおじいちゃんは何度言っても違うことをする」
- 「うちのおじいちゃんは私の名前をいつも間違えるからもう私のこと忘れてしまったの?」
このように思ってしまい、
失語症患者さんとご家族の関係がうまくいかなくなってしまうこともしばしばあります。
時に、失語症患者さんにやってはいけないことをしてしまい(悪気はなく)衝突してしまうこともあると思います。
”失語症とは”ということを知るだけで、
コミュニケーションがうまくいかない時にも、
「これは失語症の症状が出ているんだな」と、
理解できれば、ムダに衝突することも少なくなると思います。
それに失語症の特徴を知っていれば対応できることもあります。
失語症の方は日常生活や社会復帰した時に、
コミュニケーションがうまくいかず孤立してしまう傾向にあります。
孤立してしまわないためにも、
一番近くにいる人がよき理解者である必要があるんです。
そのため、普段のリハビリでは患者さんへのリハビリや指導ももちろん行いますが、
同じぐらい、患者さんにとってのキーパーソンにも失語症のことを理解してもらえるために、
指導を行なうことも大切だと思い日々の臨床を行なっています。
まとめ
- できた時にもフィードバックをする
- できる能力を活かす
- 患者さんの身近な人に失語症を知ってもらう
この3つについてお話させていただきました。
今回の記事が失語症と関わる人のお役に立ち、
失語症の方が過ごしやすい世の中になることを願っています。
p.s. 今回の記事はこちらの動画でも解説しています。
コメント
コメント一覧 (2件)
高次脳機能障害をお持ちの方は、考えることだけでも相当なストレスで疲労感が半端ないです。
優しくお声かけして下さると、助かると思います。
かめきちさん貴重な配信ありがとうございます。
素敵なSTさんたちが増えますように。
これからも配信楽しみにしております。
コメントいただきありがとうございます!
ブログでコメントをいただくのは初めてなので嬉しいです!
失語症も含め高次脳機能障害はなかなか周囲には理解されにくいのでストレスや疲労が多いです。
少しでも理解が深まるようにこれからも発信を続けていきます!
いつもありがとうございます!